オーナーの争族対策 はじめの一歩

 

~増加する課税対象者と増加する争族(遺産分割事件)~

 

 

皆さまは「相続対策」というフレーズをよく耳にされると思います。多くの方は相続税対策をイメージされ

不動産投資もこの目的のために取り組まれる方も多くいます。

 

しかし、相続税対策以外にも念頭に置いておかなければならないことがあります。それは「争族対策」です。

国税庁の「平成27年分の相続税の申告状況について」によると、課税対象となる被相続人数は年を追うごとに増えています。

 

特に、相続税改正が実施された平成27年は死亡者数に対しての課税対象者は急激に増加しました。誰もが他人事ではない争族。

賃貸オーナーの方々は、なおさらではないかと思います。今回は、争族を発生させないための対策ポイントを紹介いたします。

 

 

1.争族の基礎知識

 

①争族(遺産分割事件)の件数

 

起こってしまった争族は「遺産分割事件」として裁判所に持ち込まれるケースが多いのですが

裁判所のホームページによると、その件数の推移は次のようになっています。

 

<争族(遺産分割事件)の推移>
●平成23年:10,793件
●平成24年:11,737件
●平成25年:12,263件
●平成26年:12,577件
●平成27年:12,615件
●平成28年:12,179件
●平成29年:12,166件
●平成30年:13,040件

 

ここからは、8年間で約20%ほど増加していることが分かります。

 

なお、相続に関する相談ベースとなると件数はより増加し、例えば平成25年度の「司法統計年報家事事件簿」によると

年間約16万件の相談が寄せられていることが分かります。

 

 

 

 

②争族(遺産分割事件)を引き起こした遺産金額

 

同じく裁判所のホームページによると、平成30年の争族(遺産分割事件)を引き起こした遺産金額は次のようになっています。

 

<争族(遺産分割事件)の推移>
●1,000万円以下:2,476件(32.98%)
●5,000万円以下:3,249件(43.27%)
●1億円以下:832件(11.08%)
●5億円以下:533件(7.10%)
●5億円超:53件(0.70%)
●不詳等:364件(4.84%)

 

ここからは、遺産総額が5,000万円以下であるものが全体の75%を占めていることが分かります。

つまり、争族が発生するのは多額の遺産がある場合だけではないのです。

 

 

③相続不動産が争族の引き金になる

 

争族では配分割合でトラブルとなるケースが多く、これが土地や家屋のような分割が難しい物になると、よりもめてしまう可能性が高くなります。

なお、国税庁の平成29年度の統計では、土地と家屋・構築物の相続財産に占める割合は40%を超えています。

もちろん、多くの賃貸オーナーも、不動産を遺産として後世に託すこととなるでしょう。

 

 

 

 

2.不動産が関わる争族対策のポイント

 

①不動産売却で現金化する

 

先に紹介しましたように、その「分けづらさ」が争族の原因の一つとなっている不動産。

トラブルのタネにしたくなければ、売却して分けやすくしてしまうのも賢明であるといえます。

 

<できれば、売却は3年10か月以内に!>

 

なお、売却のポイントは、<相続開始から3年10か月以内に行う>ということです。

なぜならば、3年10カ月以内の売却であれば、譲渡所得税を軽減することができるからです。

 

売却した不動産に対する相続税額のうち、一定額を取得費に加算することができる「取得費加算の特例」が適用されるのです。

 

<空き家をつくらないということもメリットに>

 

空き家率の増加が社会的な問題になっている今、相続不動産が空き家化してしまうことは、相続人にとって大きな悩みです。

 

放置された空き家は近隣とのトラブルを引き起こしたり、「特定空家」に指定されてしまうと、土地にかかる固定資産税の優遇措置が

適用されなくなるなどのデメリットもあります。

 

 

②遺言を用意する

 

「遺言」とは「法律で定められたルールに沿って」生前に遺言書をまとめておき、相続が発生したら遺言書に沿って相続を行うというものです。

例えば、実家を長男に相続させたい場合など、被相続人(亡くなった方)の望む形での相続を死後に実現する方法として活用されます。

 

なお、遺言書には、自分で作成できる「自筆証書遺言」や公証役場の協力のもとで作成する「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」などの

種類があります。ただし、「遺留分(被相続人の近親者が有する遺産に対する取得権)」には注意が必要です。

 

 

③民事信託について

 

先に遺言について紹介しましたが、仮に、遺言を書かないまま認知症となってしまったら、その方はもう遺言書を残すことができず

意図していた人に財産を譲り渡すことが難しくなってしまいます。また、遺言書は本人が亡くならなければ効力が発生しません。

 

ここで、民事信託(家族信託)という手法があります。

これならば、本人が生きている間に管理だけは相続人などに任せ、財産から発生する利益は、本人が受け取ることができます。

 

また、自分が認知症になった場合に「どの財産をどういう形で使って欲しいのか」を、信託契約を結ぶ際に具体的に指定して

自分の希望を叶えることができます。だからこそ、争族の大きな原因となる「相続による不動産の共有」という事態も防ぐことができます。

 

ちなみに、不動産が共有状態になると何をするにしても共有者全員の同意が必要になり、有効活用の妨げになるケースも少なくありません。

 

 

3.投資不動産を相続する場合は

 

①トラブルは争族だけでない

 

アパートやマンションといった投資不動産の相続においては、争族といったトラブルだけでなく、売買をした際に買主とのトラブルが発生してしまうことがあります。

 

その原因としては、「相続人が今まで管理に携わっていなかったため、賃貸借契約の内容が分かっていない」ということや

「入居者の中に賃料の悪質滞納者がいたが、その対策ができていないまま売却をしてしまった」などがあります。

 

 

②投資不動産取引の専門家を頼る

 

このようなトラブルを避けるために重要なことは、現地調査や入居者の情報収集、賃貸借契約の書面の調査などをしっかり行うことのできる

投資不動産取引に強い不動産会社に取引を依頼するということです。

 

 

4.今から始める争族対策はじめの一歩

 

①あらためて家族構成・家族状況を把握する

 

自分自身の家族構成や、現在の状況を把握するとともに、自分の死後に、彼らに起こってくる可能性のある問題を想定します。

そして、それぞれの相続人への理想的な相続を考え、それを実現するための問題点を抽出します。

 

②争族対策の手法を把握する

 

ここで紹介した手法の他にも、争族対策をするための手法には次のような種類があります。

 

<争族対策の種類>

 

  • 生前贈与
  • 生命保険の加入
  • 養子縁組
  • 相続人の廃除
  • 事業承継税制の活用

 

争族対策には、時間がかかる場合もあるかもしれません。

だからこそ、自分自身ができるだけ長く健康でいて、争族対策に取り組んでいくことが大切です。

 

それには、健康に気を配り、認知症予防にも取り組んでいくことが求められるでしょう。

これからも、家族・親族が末永く和やかに暮らしていけるように。

 

 

 

 

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